シュウジマブログ

Apple製品,技術系の話をするブログ

iPhone/iPadを12Wで高速充電する回路

概要

iPhone/iPadはUSB経由で充電を行いますが,標準的なUSB2.0規格であれば500[mA]しか流すことができません.

iPhone/iPadに対応した充電器は,USBのデータ通信線D+とD-に規定の電圧を流すことで,より多くの電流に対応していることをiPhone/iPadに伝えます.

今回,D+とD-を複数の組み合わせで試し,iPadを高速に充電するためにはD+を2.7[V],D-を2.7または2.0[V]とすべきであると結論づけました.

なお,iPhoneは機種ごとに最大給電電力が異なるため,12Wフルで活用されることはありません.

はじめに

スマートフォンやタブレットはUSB経由で充電します.

しかしながら,充電器で一般的なUSB 2.0端子は500[mA]しか流せません.

iPhoneやiPadは,より高速な充電のためにD+,D-の電圧がある特定の値のとき,より多くの電流を受けるようになっています.

Apple公式のドキュメントというのは公開されていないようなので,ネットで情報を集めた感じ次のような電圧のようです.

stevenchen886.blogspot.com

D+の電圧 D-の電圧 設定最大電流[A](おそらく)
2.0 2.0 0.5
2.0 2.7 1.0
2.7 2.0 2.1
??? ??? ???

らしいです.というわけで,ちょっと実験してみました.

実験1

実験方法

通常の充電器の性質を知るために,iPadを高速に充電できる,充電器について,D+,D-の電圧,iPad充電時の電流を調べました.

なお,D+,D-の電圧はiPad未接続時

実験環境

項目 内容 備考
端末 iPad Pro 2017 10.5 バッテリー残量は10〜20%
配線 Apple 純正 ライトニングケーブル(1m)
電源 ALINCO DM-330MV 5Vに設定
テスタ METEX M-6000H

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実験結果

電圧

データ線 iPad未接続時の電圧[V] iPad接続時の電圧[V]
D+ 2.678 3.245
D- 2.675 0.029

電流

1.60[A] f:id:masa_flyu:20180908225144j:plain

考察

iPad 未接続時の電圧はD+,D-共に約2.7[V]でした.

これは事前に調べた,どの組み合わせにもあてはまりません.

このパターンも含めて回路を自作して試すことにします.

実験2

実験方法

以下の回路図に示すような回路を用意し,それぞれの端子にiPadを接続したときの電流値を測定しました.

f:id:masa_flyu:20180908223038p:plain

4つのUSB端子について,D+とD-の電圧を4パターン試してみました.

上記記事の3つに加えて,D+,D-ともに2.7[V]となる組み合わせも試しました.

左から順に1.0[A],2.1[A],???[A],0.5[A]となるように設定しました(上記の記事が正しければ).

実験環境

項目 内容 備考
端末 iPad Pro 2017 10.5 バッテリー残量は10〜20%
配線 Apple 純正 ライトニングケーブル(1m)
電源 ALINCO DM-330MV 5Vに設定
テスタ METEX M-6000H

基板の事前測定

電源電圧 5.091[V]時

設定最大電流 D+ 目標電圧 D+測定電圧 D- 目標電圧 D-測定電圧
0.5 2.0 2.042 2.0 2.044
1.0 2.0 2.028 2.7 2.726
2.1 2.7 2.723 2.0 2.023
2.4 2.7 2.724 2.7 2.723

実験結果

f:id:masa_flyu:20180908223909j:plainf:id:masa_flyu:20180908223917j:plain

左:1.0[A],右:2.1[A]

f:id:masa_flyu:20180908223933j:plainf:id:masa_flyu:20180908223926j:plain

左:???[A],右:0.5[A]

D+の電圧 D-の電圧 設定最大電流[A](おそらく) 実測電流[A]
2.0 2.0 0.5 0.47
2.0 2.7 1.0 0.95
2.7 2.0 2.1 1.46
2.7 2.7 ??? 1.54

設定最大電流の小さい2つ(0.5[A],1.0[A])は実測電流がそれよりわずかに下回る値を測定しました.

0.5[A]のときは,iPadのステータスバーに「充電していません」と表示されました.

f:id:masa_flyu:20180908235152p:plain

設定最大電流2.1[A]のとき,実測電流は1.46[A]と,大きく下回りました.

設定最大電流のわからない組み合わせのとき,実測電流は1.54[A]と設定されました.

考察とまとめ

一番大きな電流が流れたのは,D+,D-共に2.7[V]の1.54[A]でした.実験1の結果と,以上の結果を踏まえるに,設定最大電流は

D+の電圧 D-の電圧 設定最大電流[A]
2.0 2.0 0.5
2.0 2.7 1.0
2.7 2.0 2.1
2.7 2.7 2.4?

と埋められるべきではないでしょうか.

一方で,電流は最大でも1.6[A]以下しか流れませんでした.

バッテリは残量10〜20%になるまで減らしてあるので,てっきり2.4[A]ギリギリまで流れる組み合わせがあると思っていたのですが,実際には異なりました.

iPadの充電電流についてもっと調べる必要がありそうです.

とりあえず,iPadを高速充電するにはD+を2.7[V],D-を2.7または2.0[V]とすべきであるとは言えそうです.

現状,最良の選択肢は,D+,D-共に2.7[V]となる組み合わせです.

データ線 ハイサイド抵抗[Ω] ローサイド抵抗[Ω]
D+ 39k 47k
D- 39k 47k
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