基本的にははんぺん氏の記事のn番煎じです.
自分でもこんがらがってきて,人に説明するために情報を整理したくなったので書きます.
なお,この記事は,(知識不足も多々ありますが)できる限り厳密性を優先して書いていますので,パッと理解できるものではありません.
もう少し簡単に書いた記事が別でありますので,そちらをオススメします.
- 概要
- 端子(形状)の規格
- 通信規格
- 映像用通信規格
- 電力送電の規格
- ケーブルの種類
- 全体を通しての参考文献
- 書籍
概要
USB Type-C端子はこれまでのUSB端子規格と比べて,拡張性高く設計されています.そのために,Type-Cに関連する規格は,その役割に応じていくつもに分かれています.
- 端子の規格
- 通信規格
- 映像規格
- 電力送電の規格
その結果として,同じ端子形状であるにも関わらず,一部の規格のみに準拠したケーブルやデバイスがたくさん存在しています.
また複雑な規格に準拠しきれず,規格不適合な(本来あってはならない)製品もいくらか存在するようです.
今回はこれらの規格それぞれの役割と概要をまとめてみました.
ただし,規格策定元であるUSB-IFが作ったドキュメントを全て閲覧したわけではないので,又聞きの情報による勘違いや,憶測を含んでいます.
一応,調べた成果を図にまとめてみます.電源の仕様や,DisplayPortのバージョンなどあやふやな点がいくつかあるため,正確性は保証はできません.
端末編は以下の通りです.
ケーブル編は以下の通りです.
端子(形状)の規格
USB Type-C
次世代のUSB端子形状の規格です.
しばしばUSB-Cと表記されます.
通信の親側に使用するUSB Type-A,子側に使用するUSB Type-Bに対して,新たに両者で同一の端子形状を使用できる規格として策定されました.
同じ趣旨で以前から存在した「USB On-The-Go」と異なり,最新のトレンドを踏まえてこれまでのUSB端子に無かった特性が追加されています.
主な特徴
- 親側(ホスト・ハブ側),子側(デバイス側)ともに同じ端子を用いる
- USB 3.1といった高速な信号を流せる通信線路を4レーン備える
- 表裏問わず接続できる
その他,細かな特徴
- Type-AやBとは形状に互換性がない
- 最大電流が3[A](一部は5[A])に増加
- Type-Cのレセプタクル(メス)を備えた変換アダプタは禁止
- USB3.1と一緒に規格化されていながら,USB 3.1への対応はオプション
- USB 3.1に対応したType-Cのことを「Full-Featured」という
- USB Type-Cケーブルの最低限の実装はUSB 2.0として機能する
- 電源関連の検出に使用されるCC線を備える
ピン配置
USB Type-Cは表裏12個,合計24ピンあります.24ピンの内訳は
種別 | ピン数 | 備考 |
---|---|---|
+電源 | 4 | 5[V](USB PDに対応している場合5〜20[V]で可変) |
GND | 4 | ケーブルのシールドにも接続される |
USB 2.0 | 4 | D+とD-が2ピンずつ.Audio Adapter Accessory Modeの時はアナログ信号 |
高速レーン | 8 | 高速レーン×4 (ノイズ対策のためそれぞれ2ピンの差動伝送レーン) |
CC | 2 | Type-C独自の機能を中心に様々な動作をする.後述. |
SBU | 2 | USB 3.1では利用しない,低速線路×2 |
合計 | 24 |
こちらの通りです.
参考:USB-IF : USB Type-C Specification Release 1.3
ケーブル配線
USB Type-CのケーブルはFull-Featuredなタイプで15〜16種類の配線が通っています.
V_CONNはケーブルのための電源線なので,ケーブルが必要とする場合のみ実装されます.
種別 | 配線数 | 備考 |
---|---|---|
+電源 | 1 | 5[V](USB PDに対応している場合5〜20[V]で可変) |
GND | 1 | リファレンスだと2本+シールド |
USB 2.0 | 2 | D+とD- |
高速レーン | 8 | 高速レーン×4 (ノイズ対策のためそれぞれ2本の差動伝送レーン) |
CC | 1 | Type-C独自の機能を中心に様々な動作をする.後述. |
SBU | 2 | USB 3.1では利用しない,低速線路×2 |
V_CONN | 1 | ケーブル内蔵ICの駆動電源 |
合計 | 16 |
USB3.0の最大8本と比べると,大幅に増加しています.
にも関わらず,USB3.0の標準的なケーブル(最大6mm)よりも細く(4.8mm)なるように設計されているようです.
(左はUSB 3.0のケーブルの構造です.右のFull-FeaturedなType-Cケーブルのほうが集積度が高いことがわかります.)


参考:"USB-IF USB Type-C Specification Release 1.3 p.61"
USB-IF : USB 3.1 Legacy Cable and Connector Revision 1.0 Redline against 3.1 Final p.40
それに対し,Type-CのUSB2.0タイプのケーブルは
種別 | 配線数 | 備考 |
---|---|---|
V_BUS | 1 | 5[V](USB PDに対応している場合5〜20[V]で可変) |
GND | 1 | リファレンスだと2本+シールド |
USB 2.0 | 2 | D+とD- |
CC | 1 | Type-C独自の機能を中心に様々な動作をする.後述. |
V_CONN | 1 | ケーブル内蔵ICの駆動電源 |
合計 | 6 |
6本まで減少します.
このうち,V_CONNはケーブルが必要とする場合のみなので,USB Type-Cのケーブルで最小の構成は5本です(CCは必須).
Configuration Channel (CC)
Type-C独自のピンとしてCC1,CC2があります.またケーブルにはCCという1つの線があり,これらを用いて
- 表裏の向きの検出
- 変換アダプタか否か
- 送電電圧・電流の通信(USB PD規格)
- ケーブルの最大電流の通信(USB PD規格)
などを行います.
なお,2つのピンはプラグを指す向きによってどちらかがCC線と接続されます.
接続されなかった方の線はV_CONNと呼ばれ,アクティブケーブルで,ケーブル内の回路を駆動する電源として使用されます.
Sideband Use (SBU)
SBUはUSBでは利用しない,予備の線路のようなものです.
ただし,USB3.1に対応するケーブルは実装が義務付けられています.
また,Alternate Modeでは,低速な通信用途に使用されています.
参考:Keysight Technologies USB Type-CTM オルタネートモードと このモードで動作する規格のテスト方法
Source,Sink
Type-Cでは端子形状が同一なため,親,子の関係が曖昧となります.
Type-C独自のCCを利用した通信においては,電源を供給する側が親となります.
つまり,PCとACアダプタの場合,ACアダプタが親となります.
この親側のことをSource,子側のことをSinkといいます.
参考:USB-IF : USB Type-C Specification Release 1.3 p.19
Legacy
USB 3.1 になってもA型(Standard-Aなど)やB型(micro-Bなど)の端子は健在です.
これらの昔からある端子のことを「Legacy」な端子と呼びます.
参考:USB-IF : USB 3.1 Legacy Cable and Connector Revision 1.0 Redline against 3.1 Final p.40
通信規格
USB Type-Cの通信規格はUSBとUSB以外に分けられます.
USB なのにUSB以外とはこれいかにと思われるかもしれませんが,USB Type-CはUSB以外の伝送に対応できるように設計されています.
USB 3.1
2013年に策定されたUSB通信規格です.
主な特徴
- 最大転送速度10Gbpsの「SuperSpeedPlus」に対応
- 対応する端子にUSB Type-Cを追加
Enhanced SuperSpeed
USB 3.0以降の高速通信「SuperSpeed」や「SuperSpeedPlus」の総称です.
USB 3.1では高速なレーンのうち,(上りと下り合わせて)2レーンを使って通信します.
Gen 1とGen 2
USB 3.1規格はUSB 3.0を上書きする形で規格化されました(USB 2.0は残っている).
旧来のUSB3.0と同等のものが「USB 3.1 Gen 1」と規格化されています.
また,最高10Gbpsの「SuperSpeedPlus」は「USB 3.1 Gen 2」と規格化されています.
- USB 3.1 Gen 1 → SuperSpeed (5Gbps) に対応
- USB 3.1 Gen 2 → 上記に加えてSuperSpeedPlus (10Gbps)に対応
素直にUSB3.1とだけ言った場合,どちらのスピードに対応しているかわからないわけです.
なぜ「Gen x」なんていう特殊な名前をつけたのか気になったのですが,こんな感じかなーと憶測してみました(あくまで憶測です).
2014年までにUSB Type-CとUSB 3.1がほぼ同時に規格化され,2015年に初めて※Type-Cを搭載したノートパソコンであるMacBookが発表されました.このMacBookはこれまでにない薄型を実現するために
- USB Type-C
- Intelの4.5W CPUによるファンレス設計
を採用しています.ところが,このIntelのCPUの周辺は,SuperSpeedにしか対応していません.今後もしばらくSuperSpeedPlusに対応する見込みもありません.とはいえType-Cである以上,USB3.1と名乗らなければなりません.最新のUSB規格なのに最高速ではないというねじれ状態が生じてしまいました.
そこで,このようなねじれ状態を少しでも(マーケティング上)わかりやすくするために,「USB 3.1 Gen 1」と名付け,通信速度もUSB 3.1に対応したものを「USB 3.1 Gen 2」と名付けることにしました...気がします(憶測).
※ChromeBookの方が先と言えなくもない
参考:USB-IF : USB 3.2 Revision 1.0 Redline against 3.1 Final
USB 3.2
2017年に策定されたUSBの次世代通信規格です.
主な特徴
- USB3.1に比べてUSB Type-C端子の場合のみ,実質2倍の転送速度に対応
- 伝送距離を伸ばせるアクティブケーブルの規格が追加
Dual-Laneについて
USB Type-Cが備える4レーンの高速通信線路のうち,USB3.1では上り下り1レーンずつのみを使用していました.
USB 3.2では上り下り2レーンずつ全て利用することで,通信速度を向上させます.
これを「Dual-Lane」といいます.
よって中身は10GbpsのSuperSpeedPlusそのものですが,Type-Cでは実質20Gbpsで転送できることになります.
きちんと確認したわけではないですが,おそらくこれまでのUSB 3.1のケーブルをそのまま利用できると思われます. 親側,子側の機器はともにUSB 3.2に対応している必要があります.
なお,10GbpsがSuperSpeedPlusなら20Gbpsはなんだと思ったのですが,どうやら変わらずSuperSpeedPlusのようです.
また,各通信パターンごとの名称は「USB 3.2 Gen 1 x1」(5Gbps),「USB 3.2 Gen 2 x1」(10Gbps),「USB 3.2 Gen 1 x2」(10Gbps),「USB 3.2 Gen 2 x2」(20Gbps)となったようです.
参考文献
Audio Adapter Accessory Mode (USB Type-C規格内で言及)
USB Type-Cでアナログオーディオ出力を行えるという,「なんでもあり」なUSB Type-Cを象徴する規格です.
CCピンの電圧などが特定の場合,USB 2.0のピンの役割を切り替えて,アナログオーディオを出力できるものです.
USB 2.0が使えなくなってしまうので,他の通信との同時利用はできません.
スマートフォンに直接ヘッドホンジャック変換アダプタを挿すような用途のみを想定しているようです.
また,この規格を利用したヘッドホンを作ることはできません.ヘッドホンジャック変換アダプタ以外は下記のTCDA規格に準拠しなければなりません.
AAAMと略して言えそうですが正式なものではありません.
参考:"USB-IF USB Type-C Specification Release 1.3 p.213"
USB Type-C Digital Audio (TCDA,USB Type-C規格内で言及)
アナログじゃなくてデジタルでもオーディオを送れるよっていう事です.実のところ「USB Audio Device Class」そのものであり,他のUSB Audioとなんら代わりはありません.わざわざ言及するまでもなく,通信はただのUSB2.0です.
Audio Adapter Accessory Mode とともに付録内で言及していることからも,アナログじゃなくてデジタルを主に使ってね!!という主張なのかもしれません.だとすればAudio Adapter Accessory ModeをGoogleやAppleが採用しないのもうなづけます(勝手な予想).
でもだったら,なぜAAAMなんか作ったんでしょうね..?
参考:"USB-IF USB Type-C Specification Release 1.3 p.213"
Alternate Mode (USB Type-C規格内で言及)
ややこしいUSB Type-C規格の中でも最もややこしい規格です.
主な特徴
- Alternate Mode自体は単独の規格ではなく,USB Type-C規格の中で規格化されている
- Type-CはUSB 2.0に対応していれば良いので,残りの余ったのピンを全く異なる信号の伝送に利用できる
- USB2.0としての機能は残る
- USB3.x の通信は高速レーン2本分をUSBが使えるのであれば同時利用できる
- Alt Modeと表記されることが多い
- USB 3.1とAlternate Modeは直接関係がない
- あくまでUSB Type-C端子の規格であってUSB 3.xの通信の規格の外
- このため,USB通信規格用機器であるUSBハブはAlternate Modeに対応していない
- Alternate Mode対応機器同士を直接繋ぐ必要がある
- Alternate Modeに対応する通信規格はUSB Type-Cの規格上では定められていない *通信規格ごとに,USB Type-CのAlternate Modeでの利用が定められている
Alternate Modeに対応する規格
現状Alternate Modeに対応している通信・映像規格は
- DisplayPort 1.4
- Thunderbolt 3
- MHL
- HDMI 1.4b
があります.
このうちHDMIはAlternate Modeへの対応が遅かったために,MacBookをはじめとする多くの2018年現行デバイスはHDMIのAlternate Modeに対応していません. また,HDMIの最新バージョンは2.1ですが,1.4bより後のHDMIは今の所Alternate Modeに対応していません.
USB Billboard Device Class ( USB BB )
Alternate Modeを制御するための規格です.
Alternate Modeに対応する周辺機器にはUSB Billboard Deviceという制御ICみたいなものを搭載する必要があります.
そしてこの制御ICはUSB 2.0を使用して通信するため,Alternate Modeでは USB 2.0の機能を残す必要があります.
Alternate Modeでは,他の4つの高速レーンと2つのSBU線の通信線10線6本(高速レーンは2線で1本,SBU線は1線で1本)を使用できます.
Thunderbolt 3
ThunderboltはUSBに比べて,より高度な用途向けた汎用高速伝送規格です.
ThunderboltはUSBとは異なる規格ですが,なんでも情報を流せるという点では変わりません.
USBのように多くのデバイスを同時接続する用途は想定していない代わり,少ないデバイスと超高速で通信できます.
Thunderbolt 3はMac向けの5Kディスプレイ,大容量RAIDストレージ,外付けグラフィックスカードなどに利用されています.
主な特徴
- 伝送速度はUSB3.2を上回る最大40Gbps
- デイジーチェーン(数珠つなぎ)をサポート
- 端子の形状はUSB Type-Cのみ
- USB 3.xに比べて高速であるため,デバイスだけでなく,ケーブルもThunderbolt 3に対応したものが必要
- Thunderbolt 3の最大速度に対応したケーブルは長さが1[m]未満であるか,USB 3.xとの互換性のない専用ケーブルを用いる必要がある
Thunderboltの概要
Apple と Intel が推してる規格であり,2011年に策定されました.
当初からプロ向け周辺機器の高速通信をターゲットにしており,初代で10Gbps,2で20Gbps,3で40Gbpsと圧倒的な通信速度を誇ってきました.
他の通信規格と大きく異なる点は,独自の端子形状を持たないことです.
Thunderbolt 2までは端子形状にmini Display Portを採用していました.
Thunderbolt 3では端子形状をUSB Type-Cに変更し,USB Type-CのAlternate Modeに対応させました.
Thunderbolt 3からは小型の端子であることや,ディスプレイ解像度増加のトレンド,外付けグラッフィックスカードの浸透などから,これまで以上に普及しています.
映像用通信規格
厳密には映像も通信規格に変わりないですが,情報の流れる方向が単一(PC→ディスプレイ)で,高速リアルタイムな通信が必要であり,規格もたくさんあります.
Thunderbolt 3を利用して映像を伝送することもできますが,ここでは映像に特化したAlternata Mode 対応の規格を紹介します.
DisplayPort over USB-C
USB Type-CのAlternateModeを利用してDisplayPortの伝送を行う規格です.
Alternate Modeで最も対応デバイスが多い規格です.
最新世代のDisplayPort 1.4であれば,USB 2.0と5Kの伝送を同時に利用,またはUSB 3.1と4K60[Hz]の伝送を同時に利用することができます.
しかしながら,実際にはIntelのCPUの対応状況などから,より低速なDisplayPort 1.2に対応しているものが大半を占めます.
この場合,USB 2.0と4K 60[fps]の伝送を同時に利用,またはUSB 3.1と4K 30[fps]の伝送を同時に利用することができます.
Apple Store限定販売のLG製ディスプレイ「UltraFine」シリーズは,4Kモデル,5KモデルともにType-Cで接続します.
しかしながら,4KモデルはAlternate ModeのDisplayPort規格で伝送するのに対し,5KモデルはAlternate ModeのThunderbolt 3規格で伝送しています.
このために,DisplayPort1.2接続の4Kディスプレイは4K60[fps]を実現するため,USBハブの機能はUSB 2.0に止まっています.Thunderbolt 3接続の5KディスプレイはUSB 3.1のハブを搭載しています.
参考:DisplayPort.org DISPLAYPORT OVER USB-C
MHL Alt Mode for USB Type-C
USB micro Bで映像を伝送する規格としてスタートしたMHLはType-Cにも対応しています.
特筆すべき点として伝送に使用するレーン数を1〜4まで可変であるということです.
最小でSBUと1レーンあれば映像を伝送可能ですので,Display Portと同様にUSB 3.1のEnhanced SuperSpeedと共存可能です.
HDMI Alt Mode for USB Type-C Connector
USB Type-CのAlternateModeを利用してHDMIの伝送を行う規格です.
参考:HDMI org : HDMI Alt Mode for USB Type-C™ Connector
HDMI Alt Modeの普及状況
他の規格と比べて大きく出遅れてAlternate Modeに対応しました.
そのために,2018年現在,一般的なUSB Type-C to HDMIアダプタはAlternate ModeでDisplayPortの通信を行い,HDMIに変換しています.
今後HDMIに直接対応するアダプタが出た場合,現行のデバイスでは使用できません.
見た目には変わらないのに,中の通信方式で使えたり使えなかったりしてしまいます.
電力送電の規格
USB 3.1 USB 3.2
USB 3.1または3.2ではUSB3.0と同様に5V最大900[mA]の給電に対応します.
後述のUSB Type-C Currentがありますので,USB Type-Cの場合はより多く流せます.
参考:USB-IF : Universal Serial Bus 3.1 Specification p.582(11-10)
USB Type-C Current
USB Type-C端子はこれまでの端子と比べて流せる電流が増えました.
USB PDに対応していなくとも,USB Type-C Current という規格に対応していれば,以下の電流に対応しています..
- USB Type-C Current @ 1.5A
- 5[V] 1.5[A]以下
- USB Type-C Current @ 3.0A
- 5[V] 3.0[A]以下
ただし,Type-AやType-Bとの変換アダプタ・ケーブルについては,これまでと同様の900mAまでとなります.
参考:[USB-IF : USB Type-C Specification Release 1.3 p.26]
(http://www.usb.org/developers/docs/)
USB PD 3.0
次世代のUSB電力送電規格です.
USB Type-CやUSB 3.1とは独立した規格ですが,ほぼ同時期に策定されました.
USB Type-Cでしか利用できないため,USB Type-Cと関連の深い規格です.
これまでのUSBとは桁違いの大電力を送電できます.
主な特徴
- 5[V]で固定だった電圧が可変になった
- 給電側と受電側でお互いに通信し,受電側が要求した電圧,電力で送電
- USB Type-C端子のみで利用できる
- 任意の電圧・電流を設定可能
電圧・電流について
以下の4つが規定されています.
- 5[V] 3[A]以下 (最大15[W])
- 9[V] 3[A]以下 (最大27[W])
- 15[V] 3[A]以下 (最大45[W])
- 20[V] 5[A]以下 (最大100[W])
送電元が供給できる電力(PDP)に応じて,対応する電圧が以下の表のように定められています.
PDP | Current (5[V]時) | Current (9[V]時) | Current (15[V]時) | Current (20[V]時) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
[W] | [A] | [A] | [A] | [A] | |
0.5〜15 | PDP/5 | - | - | - | |
15〜27 | 3 | PDP/9 | - | - | |
27〜45 | 3 | 3 | PDP/15 | - | |
45〜60 | 3 | 3 | 3 | PDP/20 | |
60〜100 | 3 | 3 | 3 | PDP/20 | 5[A]対応のケーブルが必要 |
このように,電力の大きな供給機器は,最大より小さな規定電圧に全て対応することが義務付けられています.(20[V]2.5[A]のACアダプタの場合,5[V]3[A],9[V]3[A],15[V]3[A]も出力できる必要があります)
また,上記の4つの電圧以外にも任意の電圧を設定可能です.その場合であってもこのルールは変わりません. (12[V]1.5[A]のACアダプタの場合,5[V]3[A],9[V]2[A]も出力できる必要があります)
3[A]を超える送電には,ケーブルがチップを搭載し,送電できる電流を申告できる必要があります.
参考:Universal Serial Bus Power Delivery Specification Revision 3.0 p.555
不適合製品の乱造
たかがACアダプタやケーブルに高度な通信機能を要するため,中小サプライメーカーの製品を中心に,規格に適合しきれていない不完全な製品がたくさん売られてしまっている現状があります(USB-PD製品は詳しい人のレビューを見てから買うべきです).
詳しい人:
2016年に専用ロゴが用意されましたが,普及していない印象です.
以前のUSB PD
USB PDの仕様はこれまでに2回メジャーバージョンアップしてきました.
とくに1回目のバージョンアップ以前のUSB PD 1.0では標準の電圧が,
- 5[V] 2[A]
- 12[V] 3[A]
- 20[V] 5[A]
の3種類でした.現在の仕様と大きく異なりますね.
参考文献
参考:USB-IF USB_PD_R3_0 V1.2 20180621
USB BC 1.2
- 従来のUSB Type-AやB端子で利用できる電力送電の規格
- 5[V]最大1.5[A]の最大7.5[W]に対応
- 大型のスマートフォンやタブレットはこれでは足りないため,Apple規格やQuick Chargeなどの独自拡張規格が乱立
- USB Type-CではType-C Current,USB PD,USB BC 1.2以外の送電規格を利用できない決まり
ケーブルの種類
パッシブケーブル
ただの導線で接続されたケーブルです.
アクティブケーブル
ケーブル中に信号処理をするICが搭載されており,誤り訂正や信号強度の増大を行います.
USB Type-Cのアクティブケーブルというと,一般にはThunderbolt 3の最高速度に対応した長いケーブルが挙げられます.
このケーブルはUSB 3.1には使用できません.
USB 3.2 でUSBにも同様にアクティブケーブルが追加されました.
ただし,Thunderbolt 3のアクティブケーブルとの互換性は分かりません.
全体を通しての参考文献
http://www.usb.org/developers/docs/
https://thunderbolttechnology.net/blog/difference-between-usb-c-and-thunderbolt-3
https://www.hdmi.org/manufacturer/HDMIAltModeUSBTypeC.aspx
http://www.mhltech.org/technology.aspx
https://www.displayport.org/displayport-over-usb-c/
https://thunderbolttechnology.net/consumer/
http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5992-1393JAJP.pdf?id=2741428